応用化学科の佐藤玄特任助教と東京大学の内山真伸教授らのテルペン系天然物の生合成に関する共同研究が JACS Au 誌の表紙に選ばれました

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2021年07月19日

 本学応用化学科の佐藤玄特任助教・MEXT卓越研究員(兼任)と東京大学大学院薬学系研究科の内山真伸教授らの共同研究グループは、計算化学・理論化学的手法を用いて、天然物の複雑な生合成経路の解析手法を開発しました。本手法によって、長年謎であったいくつかのテルペン系天然物の生合成経路の全容解明に成功しました。本研究成果は、2021年7月9日付で米国化学会誌「JACS Au」のオンライン速報版に公開されました。また、本論文は JACS Au 誌の表紙にも選出されました。

発表論文
掲載雑誌名: JACS Au(オープンアクセス)
論文タイトル: DFT Study on the Biosynthesis of Verrucosane Diterpenoids and Mangicol Sesterterpenoids: Involvement of Secondary-Carbocation-Free Reaction Cascades
著者: Hajime Sato,* Bi-Xiao Li, Taisei Takagi, Chao Wang, Kazunori Miyamoto, Masanobu Uchiyama*
DOI: 10.1021/jacsau.1c00178
論文へのリンクはこちら:https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jacsau.1c00178

研究発表の概要
 微生物や動植物がつくりだす多彩な化学構造と機能を持つ天然有機化合物(以下、天然物)は、今も昔も創薬研究におけるメインプレーヤーです。しかし、その多種多様な構造は、酵素内部で複雑な多段階連続反応によって生合成されるため、その詳細やメカニズムについては未だに多くが謎に包まれています。
 今回、本研究グループが独自に開発してきた理論計算手法を用いて、テルペン系天然物である Verrucosane 型ジテルペン類、Mangicol 型セスタテルペン類の複雑な化学構造がどのように生合成されるかについての全容解明に成功しました。また、これまで提唱されてきた予想経路にはいくつかの共通した問題が存在することも分かってきました。たとえば、Verrucosane 型ジテルペン類、Mangicol 型セスタテルペン類の予想生合成経路にはいくつかの 2 級カルボカチオン中間体が含まれていました。一方、基礎有機化学研究において、2 級カルボカチオンは、3 級カルボカチオンと比べて 100 万倍~1000 万倍不安定であることが知られてきました。今回の理論計算では、2 級カルボカチオンの生成が巧みに回避された合理的な生合成経路が存在することを解き明かしました。また、本研究で明らかにした新たな経路には、類縁天然物合成へと繋がる鍵中間体がいくつも含まれていました。2 級カルボカチオン中間体が想定されてきた生合成経路は少なくありませんが、今回の研究では、2 級カルボカチオンを生合成中間体として提唱する際には細心の注意が必要であると警鐘を鳴らしています。本研究はいわゆる有機化学・天然物化学における学理・学術的な基礎研究に相当しますが、こうした研究が契機となり、天然物の巧みな『ものづくり』の仕組みが解明され、目的に応じて利活用できるようになれば、創薬研究に強力なツールをもたらすと期待されます。

 本学応用化学科の佐藤研究室では、計算化学・有機合成化学・生化学の三つを柱として、天然物化合物の謎を解明する研究に取り組んでおります。このような研究に興味をお持ちの学部生・大学院生・研究員、共同研究希望者の方は、当研究室の HP も是非ご参照下さい。

佐藤研究室HP: https://www.ccn.yamanashi.ac.jp/~hsato/publications.html

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