小さな結晶が拓く超伝導体の科学

大学院総合研究部工学域物質科学系(クリスタル科学研究センター) 長尾 雅則

 山梨県は, 宝石に関する産業が盛んで, その技術を基に単結晶に関する研究を行っています. 物質を構成する原子が規則正しく並んで一つの結晶を形成したものを単結晶といいます. その中でも私は, 超伝導体と呼ばれる物質を中心に単結晶の育成技術について研究を行っています. 超伝導体は, リニアモーターカーやヒトの体内を見る核磁気共鳴装置(MRI)などに用いられています. また, 未来の送電線や核融合炉の実現には, 不可欠な材料です. その超伝導体の一番の問題は, 冷却しないと超伝導状態にならないということです. しかし, どうすればそれを解決できるか(冷却せずに超伝導を実現できるか)は, 未だに人類は答えをもっていません. そこで, 新しい超伝導体が見つかると, それがなぜ起こっているのかを様々な観点から多くの科学者が研究し, その答えを得ようとしています. その研究には, 原子が規則正しく並んだ単結晶を用いて研究を行う必要があります. そのため, 新しい超伝導体が見つかると誰がいち早く, その単結晶を育成(作製)するかといったレースが始まります. 私の研究は, 様々なタイプの化合物がある中で, それに適した手法を用いて, 超伝導体の単結晶をいち早く育成し, 日本だけではなく世界中の研究者にそれを提供するといった役割を担っています. 図に示しました数mm程度の小さな単結晶が世界中を旅して, いろいろなことをあきらかにしています. 宝石に関する技術が超伝導体の研究を推進し, 科学技術の発展に貢献しています.

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超伝導体