ゲームの代数的なひろがり

ゲームの代数的なひろがり

美しいものを見つけることを目指して, 対称性について研究しています. 数学において対称性は「群」というもので記述されます. 群は対称性の本質を取り出したものであり, 代数構造という抽象的なものです. 抽象的な群を具体的に表現することで, 現実世界の対称性が現れます. 群はものごとの背後に隠れていることが多く, 隠れた群を見つけることで, 新たな美しさを発見することが私の研究目標です.

特に「ゲーム」の背後に隠れている群を研究しています. また群の中でも, 奇跡的に存在する「散在型単純群」と, 母なる群とでも呼べる「対称群」を中心に研究をしてきました. 以下, 具体的に研究内容を二つ紹介します.

(1) ゲームと群の表現

将棋などのゲームは, 数学では「組合せゲーム」と呼ばれます. この組合せゲームの一種に「マヤゲーム」があります (下で紹介). マヤゲームをただ眺めていても, 対称性を記述する, 群との関係は見えません. しかし近年マヤゲームと, 対称群の表現との間の密接な関係が分かってきました. さらに両者の関係を通して, 従来とは異なる視点が得られ, 群とゲームの双方に対する新たな発見につながっています.

マヤゲーム: 数字の振られたマス目とコインで遊ぶ, 二人対戦ゲーム. 二人のプレイヤーは交互にコインを小さい数の空きマスへ移動 (図では 6 のコインを 3 へ移動). 先にコインを動かせなくなった方の負け (上の例だと 0 1 2にコインが置かれた状態にした方の勝ち).

(2) ゲームとデザイン

群と深く関係する「デザイン」と呼ばれる構造があります. 2 点を通る直線は 1 本あります. 身の回りの空間には無限個の点がありますが, 同様の性質を有限個の点で実現するものがデザインであり, 次が例です.

デザインの例: 図には7点あり, どの2点を通る線も 1 本. たとえば 0 と 6 の 2 点を通る線は 0 1 6. また 1 と 4 を通る線は 1 2 4 (円で書かれた部分).

デザインは, 実はゲームの必勝法とも深く関係しています. 特に, ある散在型単純群と関係するデザインと対応するゲームの間には, 不思議な現象が起こっており, 現在はこの現象の解明を目指して研究をしています.

ゲームの代数的なひろがり

マヤゲーム

ゲームの代数的なひろがり

デザインの例