熱と物質の移動現象に関する研究

熱と物質の移動現象に関する研究

 気体などの物質や熱の移動現象は重畳して生じることが多く、自然界のあらゆる場面で見られることから私たちの生活と深く関わっています。
 例えば、身近なところではエアコンを使って室内を暖かくしたり、涼しくしたり、一方、地球規模では太陽によって地球が暖められていますが、地球上の二酸化炭素などの温室効果ガスによって、宇宙への放熱が抑えられて、さらに地球が暖められたりしています。さらに、地球上の生物は食物により得たエネルギーを熱として環境に放出しています。したがって、熱・物質の挙動を解明し制御することは、地球の温暖化防止やエネルギーの有効利用など、今後の環境とエネルギー問題を解決するためにとても重要です。そこで、武田研究室では、将来のエネルギーシステムとしての自然エネルギーや原子力エネルギーの利用に役立てるため、熱と物質の移動現象を調べています。
 最近、日本国内においてエネルギー政策の見直しが検討される中、未使用な再生可能エネルギーとして注目されている“地中熱”を利用した“地中熱ヒートポンプシステム”に関する研究を行っています。特に研究室では、ヒートポンプの冷媒管を地中に埋設し、直接土壌と熱交換する直膨方式ヒートポンプの実用化を目指しています。この方式は、従来方式よりも熱交換ロスが小さく、省エネルギー性が高いとされています。
 近年、環境に優しいエネルギーを利用するエコハウスというものが誕生してきています。そこで、自然の熱を利用した住宅環境に関する研究を行っており、スパンドレルと呼ばれる凹凸壁を住宅の太陽熱集熱器として利用する手法の研究などを進めています。また、従来から伝熱促進に用いられてきた伝熱フィンに代わり、多孔性材料を挿入して伝熱促進を行う方法についても研究を進めています。さらに、微小温度差を利用する技術として、ペルチェ素子のゼーベック効果を用いた発電システムによる熱利用技術の研究を進めており、山梨県内の温泉の排湯を利用した排熱利用システムなど、実用化を視野に入れた研究を行っています。
 また、次世代原子力システムに関する研究にも取り組んでいます。空気の約1/7の軽さをもつヘリウムを流路内に注入することで、流路内を自然循環流として流れる密度の大きい気体(空気、窒素etc.)の流量を制御する方法や、高温ガス炉の1次系配管が破断した際の空気とヘリウムガスの混合現象を研究しています。これは、高温ガス炉や水蒸気改質器等の気体を伝熱媒体とする機器に応用やそれらの安全性向上に大いに期待が持てる研究です。
 一方、熱や流れの計測技術の一つとして、可視化計測により取得したデータの定量化、及び数値計算の検証データとしての高精度実験データの取得にも取り組んでおり、現在はスパンドレルの矩形流路出口の速度分布計測を行っています。

熱と物質の移動現象に関する研究

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