イオン交換体で有害イオンを除去する

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 水中のあるイオンを取り除きたいとき、どうすればいいでしょう。高濃度の溶液では加熱濃縮して沈殿させることができますが、膨大なエネルギーが必要です。目的のイオンとだけ溶解度の低い沈殿を作る薬品を加える方法もあります。福島第一原子力発電所の汚染水を処理しているフランス企業の部分がこの方法です。この方法では加える薬品の量を厳密に調節しなければ、うまく取り除けなかったり余った薬品が別の問題を引き起こしたりします。またできた沈殿や使用した薬品の再利用は難しく、廃棄物を増やしてしまいます。

 身の回りの河川・湖沼の水のように非常に多量の水溶液を処理したい、また目的のイオンや処理用の薬品がどちらも残留しないよう容易に管理したい場合に適している反応が、イオン交換反応です。イオン交換は、イオン交換体(固体)中にあるイオンと溶液中のイオンとが入れ替わる、つまり交換する反応で、反応の時には高い温度などのエネルギーを必要としません。また溶液中で安定な交換体を使用しますので、過剰に加えても処理後の溶液にはまったく問題がありません。使用後は簡単に再生することができるので、すぐに廃棄物になってしまうようなこともありません。先の汚染水を処理しているアメリカ企業の部分が使用しているゼオライトは、イオン交換体として代表的な無機化合物です。しかし、ゼオライトではいろんな種類の陽イオンを同時に取り込んでしまうこともあるので、Na+が多量にある場合には他のアルカリ金属イオンをあまり取り込めません。ゼオライトは海水が混ざった汚染水にも投入されていましたが、海水中にはNa+やCa2+が豊富に含まれているため、放射性のCs+やSr2+ はうまく除去できたでしょうか。ゼオライトと同じように粘土に含まれる鉱物である雲母を使用すれば、このような汚染水からも放射性のCs+やSr2+を取り除けます。ゼオライトも雲母もいろいろな種類があります。私たちはいろいろな種類の雲母を作り、どのようなイオンを狙い撃ちして取り除くことができるかについて研究を行っています。

イオン交換体で有害イオンを除去する