ユビキタス材料としてのナノキューブ集積結晶で未来を開く
- 工学部 応用化学科担当
- (教授 和田 智志) 准教授 上野 慎太郎
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最近の希少金属元素問題に代表されるようにあらゆる元素を使用する材料開発は限界に近づいています。これからは地球上でどこでも採掘、精錬できる酸素、ケイ素、アルミニウム、鉄などクラーク数の大きなユビキタス元素からなるユビキタス材料を用いることが求められています。しかも、未来に向けて、明るい人類社会の発展のためには、ユビキタス材料であることに加えて、図1に示すように環境に優しく多機能で、かつ高性能な材料が必要です。ユビキタス元素を用いて、図1の「夢の材料」を開発するためには、従来とは異なる新しい発想が求められます。ではどうすれば良いのでしょうか?多くの科学者がこの問題の解決に立ち向かっています。私たちはこの問題を世界初の独自な方法で解決しようとしています。どんな方法か、わかりますか?
私たちは、図2に示すように様々なユビキタス材料を同じ大きさのナノキューブの形状で作製し、それらを基本単位とした上で、種々のナノキューブを自由自在に積み上げることで、目的とする「ナノキューブ集積結晶」という「夢の材料」を創ることを考えました。ナノキューブ集積結晶により、これまでの材料では絶対に到達できない環境に優しく多機能で、かつ高性能な「夢のユビキタス材料」を目指します。
では何故、ナノキューブを集積化することで従来材料よりも高性能な物性が得られるのでしょうか。これまでの材料は単位格子が3次元に連続した構造からなっており、単位格子の物性がそのまま結晶の物性になるため、計算で予測できる普通の物性しか得られませんでした。しかし、2つの異なる物質を接合すると、その界面に、単位格子の結晶構造が徐々に変化する歪傾斜構造を導入することができます。そして、この歪傾斜構造が巨大物性を発現する力を持っているのです。私たちは歪傾斜構造を持つ界面を、人工的にかつ高密度で持つ材料を創ることで、ユビキタス材料でありながら、従来性能を数桁のオーダーで超えることのできる「夢の材料」を皆さんに届けたいと考えています。
従って、ナノキューブを用いることで界面の面積を最大にすることができ、その結果、環境に優しい材料でありながら巨大物性を持つ夢の新材料を創ることができます。しかしながら、このためにはどんな材料でもナノキューブにする技術の開発、異なるナノキューブを3次元に組上げる技術、異なるナノキューブを接合し、歪傾斜構造を導入する技術など、現段階では存在しない新しい挑戦的な技術開発が必要なのです。このためには多くの力が必要なのです。皆さん、私たちと一緒に未来の新材料を創りませんか!!
図1
図2