高効率・無公害燃料電池と触媒設計

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  • 工学部 基礎教育センター
  • (教授 内田 裕之) (教授 宮武 健治) 教授 野原 愼士
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 化石燃料の大量消費により、酸性雨や地球温暖化などの地球規模での環境問題が深刻化しており、環境保全と省資源の立場からクリーンで低コストのエネルギーを安定的に確保することが世界共通の課題となっています。クリーンでエネルギー効率の高い燃料電池は、従来の火力発電に替わる発電手段として、また電気自動車用の動力源として、21世紀初頭の実用化へ向けて大きな期待を集めています。私たちの研究グループは1978年に我が国で唯一の燃料電池実験施設として発足しました。2001年4月、文部科学省令による「クリーンエネルギー研究センター」が設立されました。これまで各種燃料電池の高効率化に直結する材料設計や電極表面の解析に関する研究を活発に行っています。クリーンエネルギー研究センターと工学部応用化学科が一体となって、教育研究を進めています。2012年度からは、5年間一貫の大学院教育「グリーンエネルギー変換工学プログラム」(文部科学省博士教育リーディングプログラムに採択)を開始しました。

1.高効率・無公害燃料電池の開発
 水を電気分解すると水素と酸素になることは良く知られています。燃料電池はこれとは逆に水素と空気中の酸素を化学反応させ直接電気を取り出す新しいタイプの発電装置です。他の発電手段と異なりエネルギーの変換課程で熱エネルギーを経由しないため、燃料電池では高い効率を実現できます。しかも原理的に環境汚染物質を全く排出しません。私たちの研究グループはこの分野で30年以上の研究実績を持ち、研究の範囲も電極触媒の設計から燃料電池用新材料の作成、実際の電池性能の評価まで多岐に渡っています。これまでに発表した新しい設計概念や研究成果は国内外で高く評価され、国際的な研究交流も盛んです。
 資源エネルギー庁の提言を受け、関連企業・団体を主体に産官学が協力する燃料電池実用化推進協議会は、燃料電池自動車(FCEV,右の写真)や家庭用燃料電池の2020年頃の広範な普及を目標にしています。しかし、その本格的な実用化までに解決すべき重要課題があります。私たちは、その本質的解決法となる高性能電極触媒、新型高分子電解質膜、燃料処理用触媒について著しい研究成果をあげています。例えば、従来の電解質膜よりも安価でイオン導電性に優れた新型膜の合成や、組成とサイズを自在に制御した電極ナノ触媒の合成に成功し、世界的に注目されています。

2.原子・分子レベルでの電極表面反応の解析
 優れた電極触媒を設計するためには、電極表面の現象について原子・分子レベルの詳細な情報を得ることが重要です。私たちは電極表面の解析に従来型の電気化学的な手法に加え、新たな分析法を適用し成果をあげています。その一つである電気化学的水晶振動子ナノバランス法は電極表面の重量変化をリアルタイムに追跡できる方法でナノグラム(10億分の1グラム)の変化を検出できます。この方法でこれまで解らなかった電極表面の原子やイオンの挙動について多くの知見が得られています。また、電極表面に吸着している反応種を高感度に検出する赤外分光法を用いて、ノートパソコンや携帯電話用の燃料電池として注目されているメタノールの電極酸化反応機構を解明できました。
 これらの研究成果は、私たちのホームページにわかりやすく解説してあります。是非一度ご覧ください。私たちとともに環境問題、エネルギー問題をグローバルな視点に立って解決していこうと考える諸君を心からお待ちしています。

高効率・無公害燃料電池と触媒設計

燃料電池の作動原理

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燃料電池自動車 (トヨタMIRAI)

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アドアトム電極や合金電極での一酸化炭素の電気化学酸化(上)と酸素の還元反応(下)の様子