医学と工学の融合による安全・安心技術の開発

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 超高齢社会を迎え,福祉・医療・科学捜査などの分野で,人体損傷の評価が重要になってきています.例えば,高齢化社会における介護・福祉分野において,それらの対策のひとつとして,サービスロボットの開発が積極的に行われておりますが,人体接触・損傷に関する評価が不可欠であります.また,事件・事故の科学捜査においては,裁判員制度の導入によって,より高精度な人体損傷の検証・評価が求められています.

 しかし,人体損傷評価技術を高度化するためには,①人体代用物(屍体,動物)と生体間の力学応答差,②年齢・性別などによる個体差,③損傷メカニズムの多様さ,といった数多くの困難が存在しています.また,人体損傷に関する貴重なデータが,医学,工学,行政(警察,国土交通省…)の各分野に分散して存在し,情報の集積が行われていないといった構造的な問題も,長らく人体損傷評価技術の高度化を妨げてきました.

 そこで,医療機関,警察(科警研,科捜研),企業などと連携し,図1,2に示すような問題に取り組むと共に,医療・福祉機器の開発と安全基準の提案,科学捜査技術の確立と事件・事故の鑑定,さらには,自治体と連携して新たな社会システムの構築に向けた活動[例を図3に示す]を行っています.

 また、本研究では医療用金属材料および生体模擬材料に関する研究も行っています。現在、医療機器の放射線治療用ニードルの直進性評価やヒト皮膚に穿刺挙動が近い生体模擬材料であるゼラチンゲルを用いた調査をしています。さらに主に美容分野で用いられていて簡易的な測定が可能なキュートメータを用いたヒト皮膚の粘弾性挙動の解析、全身の定量的評価手法開発を目指しています。(図4)

医学と工学の融合による安全・安心技術の開発

図1 レオメータによる皮膚粘弾性測定

医学と工学の融合による安全・安心技術の開発

図2 コンピュータシミュレーションによる骨折リスク評価

医学と工学の融合による安全・安心技術の開発

図3 高齢者ドライバーの安全運転を長期間可能にするシステム作り

医学と工学の融合による安全・安心技術の開発

図4 キュートメータによるヒト腕の粘弾性測定