外部刺激に応答する機能性有機材料の創成
- 工学部 応用科学科担当
- 助教 西村 涼
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有機合成化学は、原子と原子を自在に繋ぎ合わせ、自然界には存在しない新たな価値をゼロから生み出す「究極のものづくり」です。私たちは、この化学の力を駆使し、光、熱、応力といった外部からの刺激を巧みに感知し、その形や色、機能をダイナミックに変化させる「応答性有機材料」の創成に挑んでいます。
研究の核となるのは、フォトクロミック分子のひとつである「ジアリールエテン」です。この分子は、特定の波長の光を照射することで、分子構造が可逆的に変化する性質を持っています。私たちは、この光反応を溶液中だけでなく、分子が秩序だって並んだ「結晶」の状態でも引き起こすことに着目しています。固体という制約の多い空間で分子を動かすための精密な設計を行うことで、ミクロな分子の変形を、マクロな「動き」や「機能」へと増幅させることが可能になります。
具体的な展開として、分子に加わった力学的エネルギーを光の信号として取り出す応力センサー材料や、刺激によって発光の色や強度を自在に操る次世代発光材料の設計を行っています。また、力を加えるとしなやかに曲がって除荷すると元に戻る「弾性」や、除荷しても曲がった形を保持する「塑性」を示すフレキシブル単結晶の開発も進めています。さらにその特性を光でスイッチする事も最近可能となっています。ごく最近では、割れた結晶、ひびが入った結晶が光照射で元の綺麗な結晶に戻る「光自己修復現象」に関する研究も進めています。これらは、従来の「結晶は硬くて脆い」という常識を覆す挑戦です。
一つ一つの分子を緻密にデザインし、その集合体であるマテリアルの物性を自在に操る。有機合成化学を通して、柔らかく、かつ賢く応答する未来の機能性材料をデザインし、社会に新たな変革をもたらすことを目指しています。
