秘密を守る安全なネットワーク通信基盤(匿名通信システム)

- 工学部 コンピュータ理工学科担当
- 教授 渡辺 喜道
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1. 概要
電子メールが普及し幅広い場面で利用されるにつれて,個人情報保護の観点からメッセージの宛先や発信元情報を秘匿したいという状況が多くの場面で発生してきている.しかし,宛先や発信元の情報はメッセージの配送,返信の配送に必要な情報であるため,これらを秘匿しつつネットワーク通信を実現することは容易ではない.
本研究はこの課題を解決する方法の提案であり,送信元を秘匿したまま送受信者間での継続的な情報のやり取りを可能にし,ネットワーク通信システム自体からも送信者・受信者の対応を秘匿する点に特徴がある.本研究で開発した秘密を守る安全なネットワーク通信基盤である匿名通信システムは,健康相談,匿名の電子投書,匿名の公開掲示板,精神カウンセリング,軍事などの誰がどこに送信したかを知られたくないような情報交換システムとして利用することができる.
情報交換したいメッセージの内容よりも発信者の秘匿を重視している代表的な例は,新聞雑誌などの身の上相談である.一般的な身の上相談では,匿名の相談者がカウンセラーに相談内容を送り,その相談内容と回答を紙上公開することで,相談者は紙上にて相談者自身への回答を得ることができる.
しかしながら,最近の多くの投書や相談では,メッセージの内容を公開することなく,同時に匿名性を保って回答を受理したいという要求が増加しつつある.特に,サービス提供を行う様々な組織(ホテル,両行会社,市町村などの自治体,高齢者などの入所施設など)に対するクレーム,初等中等学校におけるトラブルの指摘や調査依頼,企業における内部告発などである.
本研究は,このような課題を解決する方法の提案であり,匿名性及び内容の非公開性を担保しつつ,受発信者がメッセージを継続的にやり取りできる安価な通信を実現可能にするものである.
このシステムを利用した応用例としては,身の上相談,学校教員のカウンセリング窓口,電子投票など非常に多岐にわたる.
【従来型の電子メールシステム】
【匿名通信システム】
2. 匿名通信システムの基本的な利用手順
1) 送信者は匿名メールを集配所に置く.
2) 受信者は,集配所に自分宛のメールがあるか否かをチェックする.ただし,誰から送られてきたメールかは分からない.
3) 受信者は,送信者のアドレスが不明のまま返信メールを集配所に置く.
4) 送信者は2)と同様の手順で,集配所に返信メールを取りに行く.
3. 従来型の電子メールとの違い
4. 匿名掲示板との違い