植物や微生物を活用した環境浄化・保全に関する研究

植物や微生物を活用した環境浄化・保全に関する研究

 私達の研究室では植物と微生物のパワーを利用した環境の保全、浄化技術に関する研究を行っています。ここでは、私たちの考え方と研究例をいくつか紹介します。なお、本研究室は生命環境学部担当の田中靖浩助教(電子メール:yasuhiro@yamanashi.ac.jp)と協同で研究を進めています。

1. 植物と微生物による資源生産型の環境浄化!
 植物は日光をエネルギー源にしながら、窒素・リンや金属などを吸収しつつ生長します。生長した植物の体(植物バイオマス)は、液体燃料やバイオプラスチックなどの原料に利用できます。一方、微生物は環境中の有機物を二酸化炭素に分解したり、有害物質を無毒化する役割を担っています。特に植物の根の周囲にいる微生物は高い活性を示します。このように植物-微生物共生のシステムは、植物による汚濁物質の吸収、微生物による分解、植物バイオマスの生産の能力を併せ持つことからの資源生産型の環境浄化システムへの発展が期待できます(図1、写真1)。さらに、バイオテクノロジーを活用して植物や微生物の能力を高めることができれば、その可能性はますます広がるのではないでしょうか。

2. ウキクサと微生物がコラボレーション?
 田んぼや水路などで一面に広がるウキクサ(写真2)を見たことはありますか?私達の研究室ではこの何の変哲もないウキクサが、その根っこに住んでいる微生物とコラボレートして(協力して)、環境汚染物質である環境ホルモン関連物質、洗剤や重油などの構成成分を効率よく分解することを明らかにしてきました。現在は、図1でも示したようにウキクサなどの水生植物と微生物の機能をより高めながら、両者をコラボレーションさせてより優れた機能を発揮できるように研究を行っています。

3. 微生物ハンター
 自然界には数多くの微生物が住んでいます(例えば、土1 gあたりには1010個程度、河川水では106個程度の微生物が含まれているんですよ!)。でも、これらのほとんどは私達が培養したことが無い、あるいは培養できない新種の微生物で、その中には優れた環境浄化能を持つものや新しい医薬品を作り出す能力を持つものも含まれることが最近になって分かってきました。私達はこのような新種の微生物を培養して利用するための技術開発をしています。その過程でいくつかの新種微生物の取得にも成功しています(写真3)。

4. 植物で有用資源を回収しよう!
 レアメタル(チタン、プラチナ、リチウム等約30種の金属)は携帯電話やパソコン、デジタルカメラ等のハイテク製品の製造に欠かせない金属素材です。でも、その名「レアな(珍しい)金属」から分かるように、元々資源としての存在量が非常に少ないことから、世界的に枯渇傾向にあり、ここ数年で価格が急騰しています。その一方で、一部のレアメタルによる土壌汚染も生じており、農作物への二次汚染による健康被害等が懸念されています。私達の研究室では植物を用いて汚染土壌の浄化と効率的な資源回収技術に関する研究を進めています。

植物や微生物を活用した環境浄化・保全に関する研究

図1. 植物と微生物による環境浄化

植物や微生物を活用した環境浄化・保全に関する研究

写真1. 水生植物を用いた浄化施設

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写真2. ウキクサ

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写真3. 新種微生物