行列を通じた数学の理解

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 私は群や結合代数の表現とそれに伴う組合せ論の研究をしています。以前は初歩的な群論や結合代数の典型的な具体例である「行列」を高等学校で学ぶことになっていましたが、残念ながら、改訂の度にそれらの内容が削られ、現在では両方とも高等学校で扱われることがなくなってしまいました。
 行列とは数を長方形状に並べたもので、ベクトルと同じように和と実数倍を計算します。その他に掛け算を考えることが出来ます。普通の数の掛け算と異なり、行列の掛け算は左の行列の横の長さと右の行列の縦の長さが同じでなければなりません。このようにして行列に演算(足し算、実数倍、掛け算)を定めることで、連立方程式をシステマティックに解く方法が記述出来たりします。これらのことは工学部に入ると大学初年時に「線形代数学」という科目で学ぶことになります。
 この行列についての研究が私の研究テーマとなります。もう少し正確に書くと、抽象的な数学の対象を行列として表わし、その行列の性質を研究することで、もとの抽象的な数学の対象を理解するという手法により、今まで知られていない等式を導き出したり、数学的には異なるが同じ個数を持つ事象の間に新しい対応を見つけたりすることを目標に研究を行っています。