脳を真似した新しいコンピュータの研究

脳を真似した新しいコンピュータの研究

 史上初のコンピュータが誕生したのは、いまから半世紀以上も前のことです。それ以降、コンピュータは小型化高速化の目覚しい進歩を遂げ、安価なパソコンでも私たちが一生かけても終わらない計算を瞬時にしてしまうことが可能になりました。しかし一方で、いくら高速化を進めても、コンピュータではうまく扱えない難しい課題があることがわかってきました。私たち人間は、0歳の赤ん坊であっても、母親とそれ以外の人の顔や声を訳もなく認識し、母親の姿を探して台所を覗いてみたり、部分的にしか見えない玩具をそれと認識したりと驚くべき能力を発揮しますが、このように、物を認識したり、思考したり、曖昧な情報や不完全な情報を扱ったりすることは、現在のコンピュータの最も不得意とするところなのです。

 ご存知のように、私たち人間はこのような情報処理を脳で行っています。脳には、約140億個の神経細胞が存在すると言われていて、これらが相互に結合してネットワークを形成することで非常に複雑な情報処理を実現しているのです。ですから、その仕組みを真似してあげれば、人間のように考えたりする機械ができるに違いありません。このような観点から、本研究室では、脳の神経回路網を工学的に模倣した、ニューラルネットワークに関する研究を行っています。現在は、脳の機能の中でもとりわけ重要な連想記憶に関する研究に取り組んでいます。脳の記憶では、言葉やイメージ、ときには感情までもがすべて連想によって蓄えられています。また、認識や思考といった高度な情報処理は、学習によって獲得した記憶に基づいて行われています。このため、脳の連想記憶の仕組みを模倣することは、脳を造る上で大変重要なのです。

 21世紀は「脳の世紀」と言われています。いま、医学、心理学、工学などさまざまな分野の研究者が脳機能の解明、人工的な脳の実現を目指して盛んに研究を行っています。あなたもこの最後のフロンティアに挑戦してみませんか?

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