環の表現論の研究

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 私の専門は環の表現論です。環とは「足し算と掛け算ができる集合」のことです。例えば、基本的な数学的対象である整数全体の集合は環になります。他にも数学のいろんな場面で環が出てきますので、環について知る事は大切だと言えます。

 環を知る方法として、環の加群を調べる事が挙げられます。加群を一口で説明する事はできませんが、環の性質を反映するものであり、この環の加群を調べる事が環の表現論の目的になります。環の加群が大事な理由は、環の性質を知ることができるだけでなく、様々な分野(トポロジー、代数幾何学、組み合せ論、果ては数理物理学等)の数学的対象との関係が指摘されている事にもあります。近年では環の表現論と他分野との相互研究が盛んに行われています。

 環の加群と別の数学的対象との対応例を紹介します。ある種の環Rに対して、それに付随する二次形式q=q(x1,x2,…,xn)を考える事ができます。「Rが非常に良い性質をもつとき、Rの一番細かい加群とqの正ルート(方程式q=1の非負整数解のこと)が一対一に対応する」事が知られています。例えば、環R={ (■(a&b@0&c)) | a,b,cは複素数}を考えると、これに付随して二次形式q(x,y)=x2+y2-xyが得られます。このときRの一番細かい加群を求め(この計算は簡単)、上記の事実を用いると、q(x,y)の正ルートが(x,y)=(1,0),(1,1),(0,1)の三つであることがわかります。

 このように、ある種の環の表現論と特殊な二次方程式の非負整数解との間には不思議な対応が存在します。この他にも環の表現論にまつわる魅力的な対応が多く知られていますし、未だどこかに眠っていることでしょう。そのような現象を追い求め、環と加群をいろんな観点から理解しよう、というのが私の研究目標です。