ナノ構造がうみだす非線型光近接場の理論

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 10億分の1メートル程度の小さなエッジや突起;ナノ構造は、近年、人工的につくることができようになりました。ナノ構造に光を当てると、今まで知られていなかった現象が生じます;紫外光というエネルギーの大きな光による光化学反応が、エネルギーの低い可視光で起こったり、赤い光を入射すると青い光が生成(周波数上方変換)されたりします。

 私は、ナノ構造がもつ対称性の低さ;四重極子や八重極子の存在が非線型効果を可能にしている、と考えています。図1は物質と真空(空気)の界面の曲率半径Rのエッジ断面です。界面では電子の浸み出しにより真空中に-、物質側に+の双極子の層(電気二重層)ができます。図の下側に記したようにエッジ頂上部での双極子のペアは四重極子成分(2つの双極子が反対方向を向いた対)をもちます。四重極子をもつエッジに赤い光を入射すると、電場が2つ分関わった大きなエネルギー(青い光に相当)の電荷密度をエッジ頂上部につくり出します。この電荷密度から生じる”青い”光は伝搬できずここに留まり、たまたま近くにいた分子に光化学反応を引き起こしたりします。

 電荷密度がつくる伝搬しない光;非放射場は高校で習うクーロンの法則に従う電場です。この非放射場がどのようにどれだけ生じて物質にどのような影響を及ぼすかは近接場光学の基礎ですが、その物理を記述する相応しい方法がありません。私は多くの人々が簡単に理解してインフラとして使える理論を基礎からつくることを目指して研究をしています。

ナノ構造がうみだす非線型光近接場の理論

図 1: エッジの断面.エッジの頂上部だけにある四重極子を原因として周波数上方変換など非線型光学効果が引き起こされます.