テキスタイルデザインと人工知能とIoT
大学院総合研究部工学域電気電子情報工学系(コンピュータ理工学) 豊浦 正広,茅 暁陽
テキスタイルは,服飾やインテリアに用いられる布地や織物を指します.そのデザインのためには,図柄の設計はもちろん,素材の選定,加工の方法など,さまざまな知識と経験を必要とします.優れたテキスタイルデザイナは,糸を上下させたときの色の出方や糸の浮き具合を想像しながら,手間と時間をかけて織物をデザインしていきます.この作業をコンピュータがどのように手伝うか,想像がつくでしょうか?
縦横の糸が格子状に織り込まれる様子は,みなさんも普段から目にするデジタル画像とよく一致しますので,画像処理で培われた技術が応用できます.私たちが開発してきたソフトウェアを使えば,デザイナが指定する模様を元に,糸の発色を計算し,織り方の制約も満たした結果を出力してくれます.過去の優れたデザインが大量にあれば,深層学習などの人工知能技術によって,プロがデザインしたような結果に修正することもできます.富士のふもとには伝統的な織物産地がありますので,プロのテキスタイルデザイナと協力しながら,研究を進めています.
テキスタイルに電気を通す研究も始まっています.電気を通す繊維を使うことで,模様を織るのではなく,機能を織ることができるわけです.IoTは実世界でデータ化されていない情報をセンシングし,インターネットに載せて活用する技術です.そもそもよりウェアラブル(着られる)であるテキスタイルは,IoT機器としても有望です.電気を流すテキスタイルは,人の心拍や発汗,姿勢変化などをデータ化できる可能性があります.研究室ではこれまでに,織り方を場所ごとに変える織物圧力センサを実現しています.
豊浦先生,茅先生の最近の研究成果についてはこちらをご覧ください »
寺田貴雅さん(修士1年)が情報処理学会ユビキタスコンピューティングシステム研究会で学生奨励賞を受賞
参考文献:
1. 寺田 貴雅,豊浦 正広,佐藤 隆英,茅 暁陽,“部分的な織り方の違いを利用した加圧位置検出織物の設計”,情報処理学会ユビキタスコンピューティングシステム研究会,Article 10,2017-11. (学生奨励賞)
2. Tetsuya Igarashi, Masahiro Toyoura, Xiaoyang Mao, “Dithering method for reproducing smoothly changing tones and fine details of natural images on woven fabric,” Textile Research Journal, 2017-9.
3. 豊浦 正広,五十嵐 哲也,齋藤 豪,寺田 貴雅,茅 暁陽,“写真からの多色織パターン生成”,情報処理学会 グラフィクスとCAD研究会,Arcticle 1,2016-2. (山下記念研究賞)