新機能性酸化物の結晶合成

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  • クリスタル科学研究センター  工学部 先端材料理工学科担当
  • 教授 田中 功  (准教授 綿打 敏司)  (助教 長尾 雅則)  (助教 丸山 祐樹)
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 ”結晶”と聞くとキラキラ光る宝石を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。また、氷や雪のような透きとおったものをイメージする人もいるかもしれません。結晶とは、特定の物質を示す言葉ではなく、物質を構成する原子が規則正しく配列した状態を言います。したがって、ほとんどの物質に結晶は存在します。白く見える粉末も実は小さな結晶の集まりです。これを一つの大きな結晶にしたとき、透きとおった“結晶”になります。様々な物質の結晶はみなさんの身近なところで使われています。レーザー光を発生させる結晶、光を電気に変換する結晶はその代表例です。パソコンの頭脳というべき、CPU(マイクロプロセッサ)等にはシリコンの結晶が使われています。図1に示したように、結晶は、現代の生活を支える重要な役割を担っています。結晶合成はその意味で重要な技術の一つと言えます。そのため、これまで結晶化が難しかった物質の結晶化を目指した新しい結晶育成技術の開発は、環境・エネルギー問題を根底から解決する可能性を秘めているとも言えます。

 私達の研究室では主に図2に示したような装置を使って、多様な機能を持った結晶を合成する研究を行っています。これまでにルビー・サファイアといった宝石を人工的に合成したり、強誘電体、強弾性体、超伝導体など新しい機能を持った物質の結晶を合成しました。特に、ランタン系銅酸化物高温超伝導体(La2-xSrxCuO4)の結晶は、質の良いものとして世界中で高く評価され、多くの研究者に提供されています。

 最近の研究成果を次に挙げます。ルチル(TiO2)の結晶は、光通信分野では欠かせない重要な役割を担っていますが、その屈折率(2.87)がダイヤモンド(2.38)よりもかなり高いことから、宝飾用にも利用されています(図3)。当研究室では、宝飾用として透明青色のブルールチルを合成することに成功しました(図4)。

 最近、セメントの一成分であるアルミン酸カルシウム(12CaO・7Al2O3)にエレクトライド化という処理を加えることで、セメントにも電気が流れるようになったという発表がありました。私達のグループでは、この電気の流れるセメント化合物を結晶化することにも成功しました。

 この他に、一風変わった結晶として図5に示した銅酸化物高温超伝導体ウィスカーというものについても合成を行っています。ウィスカーとは、本来(ネコなどの)“ひげ”という意味でひげ結晶とも呼ばれています。また、結晶を合成するだけでなく、新しい結晶合成のための技術開発にも取り組んでいます。結晶合成において磁力(磁場)を利用する新技術の開発はその一例です。

 これらの新機能性結晶が合成できたことによって、将来、省電力で小型の高速光通信デバイス,超伝導電子デバイス,超高密度メモリーなどへの応用が可能になり、情報通信の分野に貢献するだけでなく環境・エネルギー問題の解決にも繋がると期待されています。

新機能性酸化物の結晶合成

図1. 未来に資する結晶合成技術

新機能性酸化物の結晶合成

図2. 結晶合成装置と実際の研究風景

新機能性酸化物の結晶合成

図3. ルチル結晶

新機能性酸化物の結晶合成

図4. ブルールチルの結晶

新機能性酸化物の結晶合成

図5. 銅酸化物高温超伝導体ウィスカー