整数の研究から環論の研究へ

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 様々ある「数」の中で最も重要なものの一つである整数について知りたいという想いは、数学に興味を持つ者には自然なことです。一つ整数の性質に関する有名な問題を紹介しましょう。

nを3以上の自然数とするとき、(xのn乗)+(yのn乗)=(zのn乗)を満たすx,y,zは存在しない。

 nが2のときには、いくらでもあります。3平方の定理を思い浮かべて、3辺がすべて整数の直角三角形を考えれば、例えばx=3,y=4,z=5などがすぐに見つかるでしょう。ところがnが3でも4でも100万であっても上の式を満たす整数は存在しません。これはフェルマーの最終定理と呼ばれるもので、解決するのに350年かかった大問題の一つです。ところがこの問題の答えを知って、整数についてわかった気分になれるでしょうか?たった1問解けたにすぎないという見方もできますね。そこで、整数にこだわって調べるよりも整数と似たようなものを考え、それを比較することで整数を特徴づけようという考えが生まれてきました。人が自分の個性を知るのに、他人と比べることと同じようなものです。「整数と似た」ということを、足し算、引き算、掛け算がその集合の中ででき、いくつかの計算に関する法則を満たすものとし、それらを総称して環と呼びます。そして環の一つの例である整数が持つ特別な性質、つまりどのような個性があるかを調べるのです。環には整数の他にも、多項式全体の集合や、2次正方行列全体の集合など重要な集合がいくらでもあるので、整数について研究する整数論に対し、整数のみにこだわらず環そのものを研究していく分野は環論と呼ばれるようになりました。この分野が生まれてすでに100年以上になりますがまだまだわからないことは沢山あり、近年では非可換代数幾何学などとの関連もあり盛んに研究されている分野です。私は環の持つ美しい性質に驚き、知りたいと思い、研究しています。