機能性無機材料の作製と評価

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 当研究室では、機能性無機材料の作製と評価を行っています。特に、ペロブスカイト構造(図1)という結晶構造を持つ無機材料の誘電性、圧電性、強誘電性、電気光学効果について研究を行っています。

 

◯新規非鉛圧電材料の開発
圧電材料は、電圧を印加すると伸び縮みし、押すと電荷が発生する材料で、ジャイロセンサや超音波発生源に用いられています。現在用いられている圧電材料PZTには鉛が含まれています。環境保護の観点から有毒な鉛を含まない材料の開発が望まれています。そこで当研究室では、
(1)新材料探索
(2)結晶配向制御
(3)ドメイン観察・ドメイン構造制御
を軸に非鉛圧電材料の研究を行っています。

(1)新材料探索
圧電性は、結晶構造が変化する化学組成付近で大きくなることが知られています。当研究室では、例えば図2に示したBaTiO3, Bi(Mg1/2Ti1/2)O3, BiFeO3の3つの物質の割合を変えて新規材料の合成を行い、結晶構造が変化する星印の化学組成で圧電性が向上することを見出しました。あなたも宝探しをしてみませんか?

(2)結晶配向制御
圧電性などの物性は結晶構造のある特定の方向で大きくなることが知られています。多結晶であるセラミックスは通常、結晶粒がランダムに配列しているので、圧電性は平均化されます。そこで当研究室ではシート成形や磁場を利用することで、圧電性の高い方向に結晶粒を揃えたセラミックスを作製し、圧電性の向上を図っています(図3)。

(3)ドメイン観察・ドメイン構造制御
多結晶のセラミックスは結晶粒が集まったものですが、圧電セラミックスでは、結晶粒がさらにドメインと呼ばれる電気双極子の向きの揃った領域に分割されています(図4)。セラミックスの圧電性はドメインの向きや大きさによって変化します。そこで当研究室では、ドメインの観察やその大きさの制御について研究を行っています。

◯電気光学透明セラミックスの作製
セラミックスは一般にお茶碗や湯呑みのように不透明です。しかし、作り方を工夫すると透明にすることができます。ペロブスカイト型構造を持つセラミックスを透明にすることで、電圧の印加により、光を通したり止めたりするシャッターを作ることができます。これは光通信に用いられています。当研究室では、安価な方法で透明セラミックスを作製することに成功しています(図5)。

機能性無機材料の作製と評価

図1 ペロブスカイト構造(ABO3).

機能性無機材料の作製と評価

図2 BaTiO3-Bi(Mg1/2Ti1/2)O3-BiFeO3系状態図.各成分の割合を変えることで,立方体の擬立方晶が上下方向(正方晶),斜め方向(菱面体晶)に伸びた構造となります.

機能性無機材料の作製と評価

図3 結晶粒の結晶方位がランダムなセラミックスと配向したセラミックスの模式図.

機能性無機材料の作製と評価

図4 NaNbO3エピタキシャル薄膜のレーザー顕微鏡写真とドメイン構造の模式図. 顕微鏡写真より1つの粒子の中にストライプ状のドメインが多数観察されています. 模式図の矢印は電気双極子の向きを示しています. 顕微鏡写真の白い曲線の下の領域に電圧を印加することでドメイン構造が変化しています.

機能性無機材料の作製と評価

図5 化学組成の異なる6つ電気光学透明セラミックス(直径1 cm, 厚み0.5 mm).