賢い(インテリジェント)材料

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 すべての生物は多くの組織や器官が高次に自己組織化した高分子集合体であり,さまざまな化学的・物理的刺激や環境変化に柔軟に応答する分子機械といえます。例えば,バクテリアのべん毛は水素イオン濃度差に応じて回転数を変える分子モーターであり,筋肉はATP(アデノシン三リン酸)の分解によるアクチン・ミオシン筋繊維の形態変化で駆動しています。このような分子機械の特徴は,非常に高い効率で化学エネルギーが力学エネルギーなどの仕事に変換されることです。実際,筋肉のエネルギー変換効率は60%以上に達するといわれ,通常の熱機関(エンジン)の5~35%と比べるとはるかに効率が高いことがわかります。

 では,生物から「動き」のエッセンスを取り出し,環境変化や刺激に応答して動く「賢い(インテリジェント)材料」を作ることはできないでしょうか?「動かない」有機材料に刺激を与えて自由に変形させることができれば,柔軟でしなやかに動くロボットや人工筋肉が実現できます。私達は,導電性高分子(電気を通すプラスチック)に電圧をかけると空気中で縮む現象を,世界で初めて見つけました。さらに,導電性高分子のフィルムを折り紙のように折り曲げることで,虫のように歩く有機ロボットの作製に成功しました。軽くて柔らかい介護用パワーアシストスーツや点字ディスプレイ,能動カテーテルなど,医療・介護・福祉分野での応用が期待できます。

賢い(インテリジェント)材料