溶液から生まれる新しい電子セラミックス

大学院総合研究部 (工学部応用化学科)  上野 慎太郎

 セラミックスとは非金属の無機固体材料の総称で、古くより人類とセラミックス材料は共に歩んできました。現在もあらゆる分野でセラミックス材料が我々の近代社会を支えてくれています。

 パソコンなどの電子機器にも多くのセラミックス材料が搭載されていて、機器を小型化するためセラミックス材料自身も小型化が進みました。材料の性能を維持したまま小型化するには、ただ切ったり削ったりするだけではダメで、材料の組織自体を小さくする、あるいは更なる工夫を必要とします。私達の研究対象であるコンデンサ等の電子セラミックス材料は、一般的にマイクロサイズ(10-6m = 0.001mm)前後の小さな結晶粒から構成されています。この”結晶粒”、結晶粒同士の界面である”粒界”、あるいは”ドメイン”と呼ばれる小さな組織は、材料が機能を発現するためそれぞれ重要な役割を果たしており、ヒトで例えるなら細胞の様なものです。この”無機の細胞”の役割をよく理解して材料を設計し、マイクロサイズ以下の領域で自在に組み上げることで初めて、次世代の電子セラミックス”ナノ”材料を生み出すことができます。

 セラミックス材料を合成するには色々な方法がありますが、溶液法という金属イオンの溶液から低温で金属酸化物結晶を育てる方法では、結晶粒のサイズをナノ領域に留め、結晶粒の”カタチ”も操ることができます。また卑金属や有機物などの熱に弱い材料と組合せることが可能となり、このナノサイズ化や複合化によって新しい機能を付与することもできます。私達はこうした「微構造制御」、「ナノ複合化」をテーマとする”小さな世界”の研究により、高容量複合コンデンサ材料など、大きく世界を変えることのできるセラミックス材料開発を行っています。

 

上野先生の最近の研究成果についてはこちらをご覧ください

上野慎太郎 工学部准教授が第37回エレクトロセラミックス研究討論会優秀賞を受賞
上野慎太郎特任助教が第41回応用物理学会講演奨励賞を受賞

 

参考文献:

1. Solvothermal preparation of potassium niobate/barium titanate nanocomplex ceramics with three dimensional network-configuration of structure-gradient region and their dielectric properties
S. Ueno, H. Kawashima, K. Nakashima, N. Kumada, E. Magome, C. Moriyoshi, Y. Kuroiwa, Y. Fujikawa, D. Tanaka, M. Furukawa, and S. Wada
Journal of Applied Physics, 114, 074103 (2013)
2. Preparation of titanium metal/barium titanate composites with boundary layer structure by hydrothermal method and their dielectric properties
S. Ueno, Y. Sakamoto, H. Kakiuchi, K. Nakashima, and S. Wada
Japanese Journal of Applied Physics, 54, 10NB07 (2015)